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2022.10.18

設計費用の「監理費」ってなに?設計士が行なう工事監理の業務内容とは?

NDC設計に入社して数年目の吉田です。高齢化が進む建築業界で、経験も知識も豊富なベテランさんに混じって働いています。
まだまだ至らない私ですが、社内外問わずたくさんのご協力のおかげもあり、この数年間で様々な設計監理に携わることができました。

設計費用内の監理費とは、ずばり
お客様に代わって現場を監理(監視)する業務費のこと です。

法規的に言うと・・・
建築士法 第二条 第一項の8
この法律で「工事監理」とは、その物の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること

とあり、要するに専門的な部分なども含めて、お客様の大切な資産となるものが、
お客様のご要望通りかつ問題なく建設が進んでいるかを随時確認している業務ということなんです。
また、仕事を続けてきたなかで、施主様から「設計さんも工事現場に行くんですか?」と尋ねられることがよくありました。もちろん行きます。

厳密にいえば、設計をおこなう設計者と工事を監理する監理者は別もので、設計事務所によっては監理を請け負わない事務所も存在します。
弊社は設計から監理までおこなっていますので、設計士ですが、私も現場に行くことがあるのです。

今日は更に一歩ふみこんで、
・工事監理者のお仕事とは?
・そもそも設計事務所ってどんな業務内容なの?
・担当をしてくれている設計士が若いけど任せても大丈夫なの?
等々の施主様からいただく疑問や悩みについて解説を行います。

これから設計事務所にお仕事を依頼する予定の方に少しでもご参考になればと思います。

工事監理者のお仕事とは?

改めまして工事監理者とは『管理体制を含め工事がちゃんと成されているかを発注者に代わって確認する人』です。
そして、工事現場には各工事を采配している現場代理人(施工管理者)がいます。所謂、現場監督と呼ばれている人です。
※施工管理者が複数人いる場合は、代表の一人が現場代理人になります。

工事に関する体制の話になりますが、施主様が建設会社に工事を発注します。その建設会社が元請業者となり、各工事を専門業者に発注します。
それらの専門業者は下請業者となります。下請業者は元請業者の発注で仕事をしているため、発注者である元請業者(施工管理者)に指示・管理の責任があります。
例えば大工さんに壁を作ってもらう場合、大工さんに施工図を渡したり、現場で細かい指示を出したり、材料の手配をしたりするのが元請業者(施工管理者)さんです。
つまり施主→元請業者→下請業者の組織体制となります。
では、工事監理者のお仕事は何かというと、施主様の代理をすることになります。
元請業者からの質疑相談事項や工事の承認依頼が施主様(発注者)に向けられたとき、間に入って施主様の代わりに対応したり、施主様へ助言をしたりします。
つまり、施主代理人である工事監理者と現場代理人である施工管理者という構図ができあがるわけです。

工事の組織体制の概要はこんな感じです。垣根を越えて監理者と専門業者がコミュニケーションをとることも多々あります。

そもそも設計事務所ってどんなお仕事するの?設計者のお仕事とは?

弊社を例にお話しさせていただくと、建物調査(定期調査報告等)から、建築工事に関する業務としては、建物・外構の計画から図面の作成、行政手続きなどを行ない、施主様の意向を図面化し、予定通り着工にさせるための『設計業務』、着工から竣工まで工事全体を監理する『工事監理業務』をメインでおこなっております。
ここでいう『設計業務』についてもうすこし触れておきます。

設計事務所の主な設計業務

〇【ご相談】まず施主様のご要望を聴きとることから始まります。
〇【基本設計】ご要望を念頭に行政窓口や現地に足を運び敷地の調査(地盤の形状や設備の状況など)を行ないます。それらの内容をもとに計画図を作成します。
計画が確定するまで何度でも修正をくりかえします。
〇【実施設計】建物の計画が決定したら実施設計図の作成をし、各手続き(申請や届出)を行ないます。

設計業務を経て着工に至りましたら、ようやく工事監理業務が始まります。
ここからは私の実体験をふまえて、工事監理について具体的かつ単純に書いていこうと思います。

現地調査の時点では既存建物が建っている場合もありますが、上記写真のように更地の場合もあります。この何もない所の何を見るの?と思うかもしれませんが、周辺環境はもちろん、道路の位置、給水・排水・電気・ガス関連の桝やマンホール・電柱の位置等を把握します。

 

設計事務所の主な工事監理業務

・工事資料の確認・承認
着工したらすぐに地面を掘り始めるかというとそんなことはありません。専門業者により作成された施工図や要領書(場合によっては現地で打合せ)などを確認・承認した後に着手、というのが基本的な流れです。
例えば、杭工事であれば資料の確認にくわえて、実際に施工する箇所が正しい位置かどうかを現地で採寸しながら確認します。
工事資料を確認する際には施主様や設計者の意図のほか、法規制にからむ部分でチェックをいれます。また、デザインに直接関わる仕上げ部分や、使い勝手に関わる機能に影響するものなど、内容によっては施主様の了承を得てから承認するものがあります。

・現場での検査・立ち会い
承認後に現場は施工や製作に入っていきます。
承認したから全て良しとせず、続々と着手していく工程にあわせて検査・立ち会いを行ない、実物が正しく施工されているかを確認します。建物を支える構造躯体や設備性能、断熱や防水などの室環境に関わること、やり直しの効かないことを重点的に確認します。ほか、特別に注意したいことも現地で確認します。

現場でコンセント位置の確認中

 

・各々の検討事項のとりまとめ
工事の着工後は、定期的に関係者(施主様、設計者、監理者、施工者、その他必要に応じて各業者)に集まってもらい、工事進捗の報告や現状の問題点、検討事項についての会議の場を設けます。俗にいう定例会議です。
建物の規模にもよりますが、毎週や隔週、また月例会議を開いたりと様々です。
工事中に施主様を含めた全員が顔をあわせる機会は限られていますので、資料や打合せ項目を念入りに準備します。着工前に図面が完成していますが、図面に記載されている仕様のままどんどん進めるのではなく、逐一施主様に確認をとりながら最適なカタチを目指していきます。とくにクロスやタイルなどの仕上げ関係は施主様の好みを十分にくみとったうえでの提案が求められます。

そして、全てにおいて肝心なことは『ホウレンソウ』です。一つの建築物が作られるためには、多くの人たちが長い時間をかけてそれぞれの業務を全うすることが前提になります。ですので、何もかも自分独りで抱えてしまうと後々大変なことになります。
トラブルの種って実は着工する前から自分のそばにあるのに、単に自分の視界に入っていないだけなんだと思います。外から見ている人が近くにいればすぐに問題に気がつけて、対処することで小事で済んだはずなのに、独りで仕事をして放ったらかしていたせいで大きな爆弾に成長していた……なんてことがよくありました。

おおまかに書きましたが設計者(監理者)は『工事監理業務』において以上の項目を最低限行なっています。実際はここに記載していないプラスアルファで動いている部分も多いですが、自分のキャパと相談しつつ、上記の申したように周りも頼りつつ、進めております。

防火水槽の消防検査の様子

 

担当をしてくれている設計士が若いけど任せても大丈夫なの?

これまで携わってきた仕事を通じて、私自身「こんな若いのが担当か……」と思わせているんじゃないかな、と不安に感じることが何度かありました。気のせいでも被害妄想でも、ベテラン設計者に比べて経験が浅いのは紛れもない事実ですので、その心配はごもっともだと思います。
監理者は施主様にとっての相談役のようなものです。大事な建物の設計監理に若手スタッフが担当した場合について、あえてこの場で意見を述べます。施主様と担当者、双方の不安や心配が解消されれば幸いです。
まず、どんな仕事もチームで取りくみます。知らないことは調べたり誰かに聞いたりします。設計担当が何もかも一人で行なっているのではなく、大勢の人が力をあわせてバックアップを図りあいながら建物は建っています。
また、建物を建てるチームには施主様も含まれています。例えば、植物が好きだったり、キッチンのこだわりだったり、必要なポストの大きさだったりと、施主様のほうが長けている分野はどんどん情報をいただきます。即ちより良い完成にむけて必要な情報を常に更新していくというわけです。
要するにみんなで協力して作りますので、担当はあくまでチームの一員であるということです。こういった仕事の体制を把握してもらえれば、多少は安心できるのではないでしょうか。
また、チームの中に若手とベテランが混在しているからこそ、様々な意見交換ができ、お客様からのご要望にも柔軟に対応できると体感しております。

困ったときは社内で相談

 

監理費=工事監理業務についてのまとめ

設計事務所が行なう工事監理業務とは『管理体制を含め工事がちゃんと成されているかを発注者に代わって確認する』ことであり、その内訳としては
・施工業者から提示される専門的な資料を施主様に代わって確認すること。
・現場の施工状況、進捗状況を代わりに確認し、定期的に施主様へ報告をあげること。
・建設計画全体をまとめること。

こんな感じかと思います。
監理者には監理者の、施工者には施工者の立場・役割がありますが、専門業者ふくめ工事に携わる全員が良い建物を建てるために知恵を出し合って協力しています。ホウレンソウ同様、上下関係や受発注の形態に固執しないコミュニケーションの円滑化も私たち監理側の仕事だと考えています。

少し長くなりましたが、監理費って何?や、設計事務所ってどんな仕事してるんだろうといった疑問をお持ちの方に向けて書いてまいりました。
工事監理を頼む段になった際には、建築を完成させるには必ず必要な業務と認識いただければ幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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